山んばのにしき(あらすじ)
山姥が住んでいるという、ちょうふく山のふもとの村で、みんながお月見をしていると、いきなり曇って風や雨や雹まで降ってきた。
それから、家々の屋根を踏みならしながら叫んで歩く声がした。
「ちょうふく山の山んばが、子供産んだで、餅搗いて持ってこう。持ってこねば、人、馬、ともに食い殺すどぉ」
翌朝みんなは仕方なく米を持ち寄って餅を搗いたが、だれが持って行くかで、困ってしまう。
結局村一番の暴れ者で、いつも威張っている二人の若者にその役を押し付けた。彼らは断ることもできず、「道案内がいねば」という。道を知っている者などいない。
すると、あかざばんばと呼ばれている、えらく年取ったばあさまが出てきて「おらが案内すべえ。なあに行こうとおもやぁ道なんぞ何ぼでもあるもんだ」と言った。
そこであかざばんばは、二人の若者を元気づけながら、ちょうふく山に登ってゆく。
しかし恐ろしげな生臭い風が吹いてくると、若者二人は、婆さまも餅もほったらかして逃げ帰ってしまう。
そこであかざばんばは「どうすべえ」とへたり込んでしまうが、村の衆のために「おらひとりが喰われりゃあ済むこんだ」と覚悟を決めて一人で登ってゆく。
ようやく山んばの小屋に着いて声をかけた。山姥が出てきて「おうおう、よう来たよう来た。いや、ゆんべなあ、この子を産んで、急に餅が喰いたくなったもんで、この子を使いに出したんだが、村の衆に迷惑かけなかったかと、気にしてたところだ」という。あかざばんばは呆れかえって「ひえ!?この赤んぼうが?ゆんべ使いに来たんで???」
「山姥の子だもん、生まれりゃあすぐ飛び歩く。で・・・?餅はどうした?」
「へえ、あんまり重てえんで、途中さ置いてきた」
「ほうかほうか、ガラ、お前行って取ってこう」ガラとよばれた赤んぼうは、すぐ走って行って餅を持ってきた。
「おう戻ったか、こんだ熊獲ってこう。熊の澄まし汁こさえて餅入れるだ。ばんばにもやるだ」
ガラがクマを獲ってきて、大鍋に澄まし汁こさえて、餅入れた。そのうまいことうまいこと・・・
腹いっぱい食べたあかざばんばが、帰ろうとすると「21日ほど手伝って行ってくれや」と言われて、いつ喰われるかとびくびくしながら、21日間山んばの面倒を見た。
おそるおそる帰りたいというと、お礼に見事なにしきを出してきて、「これはいくら使っても次の日には元通りになっている、不思議なにしきだ」という。「村の衆には何もねえが、これから、風邪ひとつひかず、楽に暮らせるように、こっちで気をつけておくから」と言い、赤ん坊にばんばを送らせる。
ひとっ飛びで帰った我が家では、大勢集まって誰かの葬式の真っ最中。
びっくりして飛び込むと、自分の葬式だった。
みんなは「幽霊だ」と騒ぎたてたが、生きていたとわかると泣いて喜んだ。
あかざばんばは、にしきのほとんどを村人に分け与えたが、次の日にはにしきは元通りになっていた。
村人たちは分けて貰ったにしきで、袋など作り、家宝にした。
それからというものみんな風邪も引かず、楽に暮らしたということだ。
実際には、もっと詳しく、12~3分語りました。大好きなお話です。