山の背比べ

山の背比べ 岩波少年文庫・日本民話選・わらしべ長者・ 木下順二 より再話(25分の話を10分にまとめた)

あるところに、川を挟んで二つの山が、大昔から、並んで立っておった。
北の山はなだらかな山で、南の山はややごつごつした山であった。

二つの山は、おなじくらいの高さに見えるので、麓の村人たちは、どっちが高いだろうと良く噂をしておった。
二つの山の頂きに、もし樋を掛け渡すことができたなら、水はどっちに流れるだろうかと。
南へ流れるという人もおったが、北へ流れると思う人の方が、少し多かった。

川は西から東に流れている。川上の西の村に、一人の若者が住んでおった。いや、住んでおったとは言えないかもしれん。
若者は家に居場所がないのだった。
たくさんの男兄弟の末っ子で、邪魔者扱いされ、こき使われるばかり。いくら一生懸命働いても、将来畑の一枚も貰える当ては全く無かった。
けれども若者はそんなことには頓着せず、毎日一生懸命働いておった。
何しろ分厚い胸板に力が漲っているような男であったから。

ある晩若者は夢を見た。
北の山の女神様が、
「私は南の山よりも脊が高くなりたい。小石一つでも良いから私の上に上げておくれ。そうしたら、お前の願いはなんでも叶えてあげます」といった。若者はそのまま眠り続けた。

ちょうどその頃川下の南の村を、とぼとぼ歩く娘がいた。
親がないばっかりに、親戚を転々として、どこに行っても邪魔にされ、こき使われるばかりで、ろくなものも食べさせてもらえず、ろくな着物も着せてもらっていない娘だった。
今日も今日とて、些細なしくじりをきつく叱られて、夕飯を食べさせてもらえず、たまりかねて夜中に飛び出して来たのだった。

星明りに川面を覗いたとき、お腹が空いている娘は、流れに引き込まれそうになって、「あっ」とのけぞった。そのとき上の方から誰かの声がした。
振り向いたが誰もいない。暗がりに目を凝らすと、北の山の姿が微かに見えた。また、高いところから声がした。娘は、「あ、あの山だ」と感じた。声は、
「私はみすぼらしいのは嫌。脊が高くなりたい。小石一つでも良いから、私の上に上げておくれ。そうしたら、お前の願いはなんでも叶えてあげます」と言った。
娘は石を拾うと山に向かった。

一方、若者は、いつものように夜明け前に起きて庭で顔を洗い、腕をブンブン振り回して「さあ、今日も働くぞ」と言った。だがその時、夢のことを思い出した。
「そういやぁゆんべ夢を見たっけな。山の女神様が、背が高くなりたいと言うとった。それじゃあ朝仕事の前に、ひとっ走り山に登ってくるか」
暗がりで、一抱えもある石を見つけると、肩に担いで、ずんずん山に登って行った。

夜明け前の山は濃い霧に包まれていた。
だんだん明るくなるにつれ、木々の姿が霧の中に見えてきて、小鳥たちのさえずりが一斉に聞こえ始めた。

てっぺんに着いた時、丁度山の向こう側から日が昇るところだった。
若者は「あっ」と言って石を落とした。てっぺんに女神様が立っていたからだ。お日様を背にして立つ女神様の背中から八方に後光が差して、それはそれは神々しいお姿であった。
若者は喘ぎ喘ぎ言った。
「背が高くなりたいと言うことなので、石を持って来ました」
すると、女神様は戸惑ったように、
「あたしは、 あたしも、石を持ってきました」と言ってしゃがむと、若者が置いた大きな石の上に小さな石を置いた。

少し無言の時が過ぎて、若者は「あっ」と叫んだ。相手が女神様でないことに気づいた驚きであった。
「可愛い娘さんだ」と若者は言った。
「やっぱり、おらとおんなじ夢を見たのかね」
娘にはその意味がわからなかったが生まれて初めて、自分を温かい目で見てくれて、人並みに扱ってくれる人に巡り合った驚きでいっぱいであった。
「え、夢を見てここへやってきたのではないのかね」また若者がきいたのへ、
「夢?・・・夢かもしれない・・・」と答えながら、娘は一体なんで、自分はこんなところへ登ってきておったのだろうかと、初めて気がついたふうであった。
「どうした?何をぽかんとした顔で・・・うちはどこだ?」
「うちは、え、うちは無いのか?・・・うん?」
黙って若者を見上げていた娘の目から、突然涙が吹き出るようにわき上がった。それは多分、何やらわからぬ幸せと巡り合ったために溢れ出た涙だったのだろう。
娘は急に、小さい頃から今日までの自分の身の上を、若者に打ち明けたいという、気持ちになった。
吹き上がってくる涙をぬぐいもせずに、娘は昨夜川の岸での出来事を、そして夜中に川の岸をほっつき歩かねければならなかった訳を話し、幼い日からの身の上を詳しく語った。

しばらく時が過ぎて、お日様がやや高くなった頃、しっかりと手をつないで、山を駆け下りてゆく二人の姿があった。
若者は、「女神様はなんでも願いを叶えてあげると言われた。
おらは願いなど持ったことも無かった。おらの願いが叶うことなど、想像もできなかった。だがやっぱり願いはあったのだ。
今日から家を出て、この人とこの山で暮らそう。この山のことなら知り尽くしているから二人でなら生きて行ける。
厄介者のおらが家を出るといえば、みんなは喜ぶだろう。だがもしまだこき使っていたいと言うのなら、その時はこっちからおん出てやるまでだ」と心に決めていた。

若者に遅れまいとついて行く娘は、激しく波打つ胸の中で思っていた。
「みすぼらしいのは嫌と、女神様に言われたと思ったが、あれは私の気持ちが、声になって聞こえたのではないかしら。いままで、人は冷たいもの、私は生まれつきみすぼらしい女の子、そういうものだと思っていた。でも、私だってみすぼらしいのは嫌。胸を張って、人に愛される美しい女になろう。女神様はこの私の願いを叶えてくださるだろう」
娘は、若者の手を離すまいとしっかり握って、若者と肩を並べて、大股に駆け降りて行った。

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何年か前にも、掲載したお話でした。







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# by hisako-baaba | 2018-06-19 15:36 | Comments(1)

胃痛再発したけれど発するFMで元気に収録「山の背比べ」を語ってきました

昨日は大失敗。普通に食事して居たからもう良いだろうと、普通に運動してしまい、ヘルパーさんがやってくれるというのに先に掃除機をかけて腰痛を起こし、昼食も普通に食べて、夕方トウモロコシを半分食べたら・・・・夕飯は喉を通らず、ヨーグルトとクリームチーズで、チリチリする痛みをなだめて寝たら、度々目が覚めました。

今朝は夫の方がお腹が変だと大騒ぎ、どうも昨夜便秘薬を飲みすぎたみたいです。
寝る前の薬は私に管理させないから困る。なんとしても預かってしまわなくっちゃ。
胃腸丈夫なんだから薬を間違えなければ問題ないのです。

私は朝食に梅粥と思ったけれど、食欲ないからヨーグルトとクリームチーズで済ませました。
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火曜日は収録の日。
発するFMに10時に行って、打ち合わせ、先月分として頂いたCDのタイトルにあった疑問も理解できました。
昔々のバスガールの前に読んだ、偽学生アルバイトとか、闇市のあった頃とかを、バスガールと一緒に体験談1としてカウントしてあったので、タイトルがずれて居るのかと誤解して居ました。
バスガールは正味四回でした。

今週22日から民話に戻り、田植え狐、くすのき、嫁の草取り、あとおいしだいだかが放送予定。

古峯原様が、29日に回る。

持っていったipadに自分の記録を整理しなおしました。

今日は「山の背比べ」だけ語って、1時間だけで帰ってきました。

私は語ると俄然元気が出るのです。
胃痛も無くなったしお腹も空いてきました。お昼は梅粥を作って、夕食は普通食に戻せるかも。煮物中心が良いでしょう。

貴重な梅雨の晴れ間です、買い物に行ってきます。明日は雨だから。






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# by hisako-baaba | 2018-06-19 11:32 | Comments(0)

大阪方面の地震心配です_____リハトレで「山の背比べ」を語りました

朝出かける前に大阪方面の地震の知らせ、ビックリしました。でもテレビはまだ平和なビル街しか写して居ませんでした

リハトレから帰ってニュースを見たら死者が3人出てしまったと。
小学生のお嬢さん可哀想すぎます。上からブロック塀が降ってきたなんて。

学校の施設だというのに、ブロック塀、なぜ普段から危険だと思わなかったのでしょうか。
鉄筋なしの古いブロック塀は早く取り壊してしまって欲しいですね。
全国のブロック塀に規制をかけて欲しいです。

このあと南海トラフ地震になりませんように。
関東にも不穏な感じがありますね。明日は我が身かも。用心したいです。

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今朝はちゃんと納豆に卵とキムチなど入れてご飯を食べて、早々とリハトレに行くことができました。

マシンも普通にこなして、コーヒータイムには、いつもの聞き手さんは居なかったけれど「山の背比べ」を、熱心に聞いて頂けました。

帰ってからひどく疲れて居ました。もうちょっと控えるべきでした。

午後はヘルパーさんが、お風呂と床とキッチンを手早く掃除して、時間が余ったからと、トイレも洗ってくれました。トイレの床だけは帰宅してすぐ洗剤で拭いておいたのだけれど、その続きを予定外でやって頂けて助かりました。



父の日のプレゼントの珍しいお菓子が、1日遅れでお嫁ちゃんから届きました。宅配屋さんも大変のようです。
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冷凍の揚げまんじゅうなので、慌てて箱から出して写真撮らないうちに冷凍庫に入れてしまいました。
初めての味をご馳走様。







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# by hisako-baaba | 2018-06-18 18:52 | Comments(2)

グリラーの鍋敷き用に棚板

グリラーの鍋敷きは高価なので、ホームセンターに行ったついでに普通の板を買おうと思ったら、適当なサイズがない。
横を見たら、棚板の一番小さいのがちょうど良いサイズ。しかも分厚くて、260円。

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これで十分。もしも反ったら削るか何か貼る。分厚いから多分熱では反らないでしょう。
棚板用に仕上げてあるからすべすべ。そのまま使える。


まだまだ梅粥とうどんしか食べられないけれど、胃痛は無い。
ムカついたらぬるいサイダー1日にコップ1杯でスッキリする。
今夜はおかずも食べられそう。明日は大丈夫でしょう。






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# by hisako-baaba | 2018-06-17 17:39 | Comments(6)

買い物探しは架空であっても楽しかった

一昨日の胃痛にはびっくり。
座り込んでのストレス解消には、バーチャル買い物が良かろうと、ネット内で冷蔵庫を探し回った。
もちろん買う気は無い。12年経つ冷蔵庫は故障もないから多分まだまだ使える。

引っ越してくる時古い冷蔵庫を廃棄した。これには自動製氷機が付いていた。忙しくて手入れは無理だから使う気は無いし邪魔で仕方なかった。
だから現在のは自動製氷無しで、便利な製氷皿がついている。これが楽チン。

この次も絶対自動製氷は嫌だ。なんと謳われていようと信用する気がないし、清潔を保つ自信もないから。

でドアが逆向きとなると、選べる範囲が極端に狭くなる。現在のものの後継機種でも良いが、もっと合理的な作りのを一つだけ見つけた。

多分次を買う頃まで、これと、現在のメーカーのを、注目していくだろう。
私の難しい注文に合うものが、二社から買えるという安心感は大きい。

で、バーチャルな買い物は楽しく終わり、ぬるいサイダーで胃痛も消えた。(薬では消えなかった)
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体調は万全でなくても、胃痛がなくなった昨日は買い物に走り、民話の稽古もできた。
忘れていた民話を過去のブログで思い出したら、すぐに語れたし。








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# by hisako-baaba | 2018-06-17 07:23 | Comments(9)

下町の弁護士さんのブログ

鈴木篤弁護士のブログ。





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# by hisako-baaba | 2018-06-16 17:39 | Comments(0)


1931年生れのhisakobaabaが七十代万歳と言って始めたブログが八十代に続いています
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