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「栄光の手」を語ってきました

今日は歴史の会でした。奈良時代の続きを、いつもより短めにして、みんなで会食。
月会費500円のほかに、お弁当代千円ということでしたが、まずはお菓子がずらりと並んだので、どんなお弁当かなと思ったら、握り寿司がたっぷり。お寿司だけで千円でしょう。
手作りケーキは配られるし、糠漬けもお二人が持参されたようで、おつまみ二袋、ミカン一個、チョコレート三個、野菜ジュース、お吸い物・・・びっくりでした。写真に撮らなかったのは残念。
三十数人テーブルを囲んでビール少々で乾杯。
役員さんは準備がさぞ大変だったでしょう。

食事のあとは、大正琴の演奏、私の語り、ケイナとオカリナの演奏と、カラオケ。
カラオケで一番お上手なのは歴史の先生でした。びっくりの美声でした。皆さんもなかなか達者で、声の良い方が多かったです。
楽しかった5時間が過ぎて、3時に解散しました。
11月の会は遠足で、新田義貞の城跡などに出かけるそうです。これも楽しみです
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今日語って、皆さんに大変受けたお話は、櫻井先生から一度だけ聞いたお話をもとに、自分で語り替えたお話です。こんな風にしゃべりました。


私はこの町に越してきて2年半になります。何にも知らない街に来ちゃったので、引っ越し鬱になったら大変だから、面白いことを探しまして、2年前から中央図書館の「かにかにこそこそ」というお話サークルで、昔話を覚えこんでは、唐沢小学校や資料館などで語らせていただいています。

でも今日は、大人の方ばかりで、暑気払いと言う事ですから、昔話ではなく、もっと毛色の変わったお話をしたいと思います。

 「栄光の手」
うちの娘は、もう20年近くスペインで暮らしていますが、大学時代の同級生達とはいまだにメール交換などしているようです。
里帰りした時に聞いた話ですが、同級生に神谷健と言う青年がいまして、大学時代はバンド活動に熱中していました。卒業したらミュージシャンになると言っていましたが、世の中そんなに甘くは無くて、とりあえず超一流の商社に入社しました。ほんの腰掛けのつもりで受けた大企業に、一発で受かってしまうほどの秀才なのです。

数年後やっと長い休暇が取れることになりまして・・・長いと言っても日本の会社ですからほんの10日余りなんですけどね・・・娘にメールで訊いてきたそうです。
「アイルランドのダブリンに10日間行ってくるのだけれど、一人で海外に行くのは初めてなので、注意すべきことなんか教えてほしい」と。

彼がそのころ熱中していた音楽を、たっぷり聴けるのがダブリンだったそうで、まずインターネットでB&Bに予約を入れました。B&Bは宿泊と、朝ごはんだけの民宿ですよね。そこを選んだのは、建物が中世のままの美しい館で、家具調度も中世のままに見えたからです。

その宿に着いてみると、期待以上に素晴らしく、落ち着いた雰囲気でした。オーナーは上品な老紳士で、人を使って宿を運営していました。
居心地が良いので神谷君は帰国まで10日間そこに泊まり続けることにしました。毎日毎晩街に出て、コンサートやライブをはしご、音楽に浸りきって、会社のことなど忘れ果てていました。

明日は帰らなければならないという日にオーナーが言いました。「ケン、君は明日帰ってしまうんだね、今日は私の部屋で少し話していかないか」
彼ははじめてオーナーの広いリビングに入りました。
大きな暖炉の脇には重厚な造りの本棚が有りました。分厚い本がたくさん並んだ真ん中に空間が有って、そこになんとも気味の悪いものを見つけて、彼はゾッとしました。干からびた人間の手らしきものが、握手を求めるような形でこちらを向いていたのです。
そこへ、クローバーの模様のお茶道具を持ってはいってきたオーナーは言いました。
「それが気になるかね。それは栄光の手と言うもので、昔々縛り首になった罪人の手を、死刑執行人から買い取って、魔術的な方法で加工したものなんだ。
燭台に加工されたものもあって、泥棒がそれに蠟燭を灯して侵入すると、家の人は深い眠りに落ちてしまい、すべてを盗み出すことができたそうだ。
だがこの栄光の手は違う。一生に一度だけ、この手を握りしめて、心からの頼みごとをすれば必ず叶えてくれるのだ。
私はそれを骨董屋で買ったのだが、骨董屋の主もこの手のおかげで店を持てたと言っていた。しかし私はたったひとつの願い事を決められないまま、長年居間に飾っておいた」
そこまで話してオーナーは「お湯が沸いたようだ」とキッチンに立ってゆきました。

次の瞬間、神谷君は栄光の手に飛びついて握りしめ「僕を一流のミュージシャンにしてください」と言って手を放すと、素知らぬ顔で椅子に戻りました。

クローバー模様のティーカップに紅茶を注ぎながら、オーナーは話を続けました。
「私たち夫婦は、私が会社を辞めたらこういう館を買って、B&Bを始めるのが夢だった。世界中の人たちと話がしたかったからね。
退職の予定が近づくと、夫婦で建物を探し歩いた。この館を見たとき、二人は此処しかないと感じた。建物も家具も何もかも中世のまま見事に保存されていたからだ。しかし値段が飛びぬけて高かった。私の退職金に蓄えをかき集めても、到底足りなかったので、私は「無理だからあきらめよう」と言った。すると妻は、「栄光の手に頼むのは今よ」と言ったかと思うと両手で握りしめて、「私たちに、いくらいくら下さい!」と叫んでいた。(金額も聞いたのですが、いくらと言ったのか、私は忘れてしまいました)

次の日、妻は家を出たところで、歩道に突っ込んできた暴走車にはねられ、即死してしまった。
相手が一方的に悪かったので、莫大な賠償金が支払われたが、それは妻が栄光の手に下さいと言ったその金額だった。
妻の志を無にするわけにいかないので、私はこの館を買って、ずっとB&Bを営んでいるのだよ」

神谷君は真っ青になりました。
次の日、彼は不安な気持ちを抱きながら、東京へ帰りました。

そこまで話して娘はトイレに立ちました。

私は、神谷君がどうなったか知りたくてたまらなかったので、戻ってきた娘にせっついて訊きました
「それで、神谷君はどうなったの?」すると娘は
「どうもならなかったわよ。彼はその会社に今も勤めていて、かなり出世したといううわさよ」
「え?で、音楽は?」
「企業戦士に音楽なんかやってる暇はないわよ」
私がポカンとしていると、娘はけろっとして言いました
「栄光の手には、日本語が解らなかったのよ」
by hisako-baaba | 2009-07-14 18:02 | 語り | Comments(14)
Commented by 遊工房 at 2009-07-14 18:35 x
アハハ
殆ど久子さんの声で聞いてる感じで読んでしまいました
それにしても
録音できたらなあ!
皆聞きたいと思うよ
Commented by HOOP at 2009-07-14 21:30
日本語が解らなかったとは、恐れ入りました。
Commented by hisako-baaba at 2009-07-14 22:50
遊さん
録音ならちいちゃいテープレコーダーで出来ますが・・・
この話うまくオチがついたでしょ。一番受ける話です。
Commented by hisako-baaba at 2009-07-14 22:51
HOOPさん
これって落語?落ちがあるから大ウケするようです。
Commented by silku928 at 2009-07-15 20:08
こんばんは!今日は猛暑でしたね。
歴史の会、いいですね~♪。さすがは、みなさま芸達者!!
オカリナの響きもいいですし、大正琴も素敵。
もちろん、ビールにお寿司なんて、最高でしょう。
栄光の手、ワクワクしながら、拝見しました。
これは、受けるでしょう!
しかし、何ともなさそうで、ありそうな?お話。
スペイン在住の娘さんと企業戦士の神谷君が登場したあたりが、
何ともリアリティがあり、日本的!ですね。
久子さんの語り、是非いつの日か、お聞きしたいものです。
Commented by hisako-baaba at 2009-07-15 22:16
芙蓉さん
楽しい5時間でした。
栄光の手…講釈師見てきたようなウソを言い…全部ウソです、と種明かししなかったから、皆さん実話だと思いこんじゃいました。
でもこんな青年居そうでしょ。理想を忘れて現実的になりきれる人・・・
Commented by HOOP at 2009-07-16 07:26
もとはイングランド北部の実話らしいですよ。
Commented by hisako-baaba at 2009-07-16 11:58
HOOPさん
元は猿の手というお話なのだそうですが?今度読んでみようと思っています。

Commented by mamadance at 2009-07-16 15:12
GOOOOOOOOOOOOOOOD!!
面白いです!
Commented by sidediscussion at 2009-07-16 16:34
高校生の時に英語購読の時間に読んだ”Monkey's Paw"(猿の手)という短編をいつも覚えていました。 いま調べたら1902年にW. W. Jacobs作の短編で英国のホラーです。 この話が影響した映画などがあるようです。 3つの願いがかなう魔力を持つ猿の手なんですが、高い代償を払って願が叶います。 私の読んだものも、家の支払い金をねがったばかり、息子が事故で死亡、その代償に願ったと同じ同額の報酬金を支払ってくれます。二つ目の願は母親の息子に会いたいという願いだったと思います。怖い話でしたよ。  
Commented by HOOP at 2009-07-16 20:11
http://en.wikipedia.org/wiki/Hand_of_Glory
これだと思うのですが、、、

The Hand of Glory and other gory legends about human hands
http://www.pitt.edu/~dash/hand.html
これを読むと、19世紀前半には、既に本になっていたようですね。
Commented by hisako-baaba at 2009-07-17 22:11
mamadanceさん
面白いですか。良かった。私の大事な持ちネタにします。
Commented by hisako-baaba at 2009-07-17 22:16
kiyoko様
猿の手はいろいろな訳本が出ていると、櫻井先生から聞いています。
英国の作者は、フランスなどヨーロッパの言い伝えを参考にして書いたそうです。
ハリーポッターの中にも登場するんですって。
Commented by hisako-baaba at 2009-07-17 22:21
HOOPさん
英語は読めませんが、訳されたものを読んでみます。
作家はヨーロッパのHand_of_Glory伝説をもとに書いたそうで・・・
ハリーポッターの作者もどの辺にこの話を引用しているか知りたいです。
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